
術後など、シビアな状態の患者さんの尿量はどのくらいでしょう?
- 時間尿量の覚え方
- 尿量観察の意味
- 時間尿量の正常値
- 確認
- もし時間尿量が維持できなくなったら
- まとめ
- 過去問を解いてみよう【看護師国家試験より】
- 【第86回】心臓手術を受けた患者の術後 24~72 時間の所見で異常はどれか。
- 【102回 状況設定問題より抜粋】Aさん(40歳、男性)。入院時体重65kg。既往歴に特記すべきことはなく、全身状態は良好である。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は450㎖で輸血はされなかった。術後1日、体温37.5℃、呼吸数24/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg。Hb14.8g/㎗。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%(酸素吸入3ℓ/分)。尿量50㎖/時。創部のドレーンからは少量の淡血性排液がある。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、創痛が強いため呼吸が浅く、離床はできていない。術後1日のAさんのアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。
時間尿量の覚え方
尿量観察の意味
急性期や手術後の観察項目として尿量は重要です。
尿は何からつくっているかというと、血液ですね。
というわけで、尿量を観察すると、循環動態がある程度はわかります。
尿量が維持できている→循環動態がまずまず安定している
尿量が維持できていない→循環動態が不安定、血液が足りない!、出血?、ショック!?
ということになるわけです。
尿量は、周術期や急性期であれば、患者さんにはたいていバルンカテーテルが留置されています。そのため測定がしやすく、数値で記録し観察できるので、アセスメント項目として重要なんですね。採血は痛くてつらいですけど、尿はいくら採っても痛みはないですから使いやすい。
それでは、時間尿量をみていきましょう。
時間尿量の正常値
1~2mL/kg/時
最終結論としては覚えたいのは↑です。ただ、丸暗記しても忘れやすいですし、どうせならほかのデータ、たとえば1日尿量とかも一緒に覚えてしまって、どれか忘れてもどれかを思い出して導いていく、という手法のほうが有効です。
まず、大体の一日の尿量を思い浮かべてみましょう。1リットルは超えますよね。「健康のために意識して水飲んでます私」、なんて場合は2リットル超えくらいになるかもしれません。
さらに計算しやすさを考えて
1200~2400ミリリットルを1日の尿量とします。
あとは、数値を置き換えていくだけ。
24時間→1200~2400mL となるわけなので
1時間→50~100mL となります。
50~100mL/時が出てきますね。
さらにもう一歩進め、これに体重を加えましょう。
もちろん体重が多い(体格がよい)人ほど尿量も多く出てないといけないし、体重が少ない(小柄)な人は尿量が少なめになるはずです。
ただし、ここでも覚えやすさと使いやすさ優先で、一般的な成人の体重を50キログラムとしてみていきましょう。
そうすると、体重50キログラムの人が1時間あたり50~100mL
式にすると、50~100mL/50kg/時となります。
1日(24時間)だとどうなるか確認してみると、
1時間50mLだと24時間で1200mL
1時間100mLだと24時間で2400mL
というわけですね。
確認
数値がたくさん出てきたので一度整理します。
- 1~2mL/kg/時
- 50~100mL/kg/時
- 1200~2400mL/kg/24時間
もし時間尿量が維持できなくなったら
急性期や手術後は身体のなかの血液が不足しており、血圧や尿量が低下してしまうことが多いです。尿量が低下するのはある程度は仕方ないとはいえ、あまりにも減りすぎると身体のゴミが捨てられず、色々な障害がおこってくるので、最低限必要な尿量というのがあります。
それが、0.5mL/kg/時 です。
計算して確認していくと
体重50kgでは
1時間で25mL
24時間なら600mLとなります。
最初にみた健康な成人の半分から下手したら1/4というのがこの量です。調子が悪いかたでも最低限この量はなんとしてでもキープしたいということを覚えておきましょう。
まとめ
- 時間尿量の正常値
- 1~2mL/kg/時
- 最低限確保したい尿量
- 0.5mL/kg/時
過去問を解いてみよう【看護師国家試験より】
【第86回】心臓手術を受けた患者の術後 24~72 時間の所見で異常はどれか。
- 1.中心静脈圧は 6~14cmH2O である。
- 2.血圧は 100~140/80~90mmHgである。
- 3.動脈血酸素分圧は100~120mmHgである。
- 4.尿量は 0.1~0.2mL/kg/時である。
答えは
↓
↓
↓
↓
↓
4が異常。尿量は1~2mL/kg/時が正常。術後でも0.5mL/kg/時はほしいところ。
1.2.3.はすべて問題なく正常値。
【102回 状況設定問題より抜粋】Aさん(40歳、男性)。入院時体重65kg。既往歴に特記すべきことはなく、全身状態は良好である。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は450㎖で輸血はされなかった。術後1日、体温37.5℃、呼吸数24/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg。Hb14.8g/㎗。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉92%(酸素吸入3ℓ/分)。尿量50㎖/時。創部のドレーンからは少量の淡血性排液がある。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、創痛が強いため呼吸が浅く、離床はできていない。術後1日のAさんのアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1. 体温の上昇は感染による。
- 2. 脈拍の増加は貧血による。
- 3. 血圧の上昇は麻酔の影響による。
- 4. 酸素飽和度の低下は創痛による。
- 5. 尿量の減少は循環血液量の減少による。
答えは
↓
↓
↓
↓
↓
4と5が正解。
5 術中の出血のため循環血液量が減少し、それが尿量の減少となって観察できている。成人男性で尿量50mL/時は明らかに少ない。
4 痛みで呼吸が浅いと書いている通り。
1 体温は術後は多少はあがるのは仕方がなく微熱なので感染とはいえない。
2 Hbの値から貧血とはいいづらい。
3 麻酔の影響でなく、術後にたとえば交感神経やホルモンが働いて血圧をあげようという反応がおこっていると考えられる。
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