
なんで半側空間無視は左に多いの?
視空間認識は頭頂葉の機能だが、視空間認識では右大脳半球が優位だから
これが結論ですが、これだけだとわかりづらいので補足していきます。
頭頂葉には視空間認知という働きがある
大脳のてっぺんの頭頂葉には視空間認知というはたらきがあります。
名前の通り空間を認識するというものです。
ちなみに頭頂葉には他に、触覚や絵を模写するなどのはたらきもあったりします。
というわけで、頭頂葉が障害されると、障害の程度にはよりますが
- 自分の左手側から話しかけられてるのに無視してしまう(空間にいる相手が認識できない)
- 食事をしてもお皿の左半分だけ食べずに残してしまう
といった症状が出てくるのですね。これを半側空間無視といいます。
では、なんで左側の症状になることが多いのでしょうか。
大脳半球には優位半球がある
まず、大脳は、一般に右脳・左脳とかって言われる通り、右の大脳半球と左の大脳半球の大きく2つに分かれています。
それで、左のほうがAという能力が強い、とか、Bの能力なら右が強い、とかってのがあるんですね。
たとえば、言語能力に関しては左が優位です。
視空間認知に関しては右が優位半球である
言語能力含めて大体の能力は左が優位なことが多いんですが、視空間認知に関しては右優位です。
つまり、
右の頭頂葉は右と左の空間を認知し
左の頭頂葉は右しか認知できません。
右はオールマイティーで、左はその半分の力しかないわけです。では、
左頭頂葉障害では
オールマイティーの右は無事です。
右が左右両方ともカバーして視空間認知しますので症状が出ません。
右頭頂葉障害では
左頭頂葉がひとりでがんばりますが、左脳は右しか認知できません。
なので、自分にとっての左空間は認識できなくなります。
左半側空間無視となります。
半側空間無視(視空間失認)の症状
左が認知できてないので、左側から声をかけても気づかなかったり、食事をとってもお盆の左半分だけ残してしまったりします。また、患者さん自身が左を認識できていないことを気づきづらいのも特徴です。
たとえば、いまこの文章を目で追っていたとして、そのときにあなたは自分の鼻がみえてたでしょうか?自分の鼻は意識すればしっかりと視界には入ってるはずですが、普段は全く見えていないですね。なぜなら眼でモノを見るときに自分の鼻なんて意識しないからです。
気にしてないものは存在しないも同然です。
半側空間無視の方にとって、左側の空間はないも同然の存在となってしまっています。なので身体の左側をぶつけてしまったり、車いすの左のブレーキは忘れてしまったりと、怪我や事故しやすいのも重要な特徴です。
まとめ
視空間認知は右頭頂葉優位のため、右頭頂葉障害で左半側空間無視が出やすい。
半側空間無視では左の認識ができないことで怪我も多いので要注意。
過去問をみてみよう【95回看護師国家試験】
状況設定問題です。
78歳の男性。自宅で突然倒れ救急車で来院した。体温36.5℃、呼吸数14/分 脈拍数80/分、血圧180/100mmHg、ジャパン・コーマ・スケールⅢ−100であった。検査の結果、右中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、保存療法を行うことになった。
問題1/3意識レベルを判断したときの患者の状態はどれか。
- 1. 声かけすると覚醒する。
- 2. 呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼する。
- 3. 痛み刺激で払いのける動作がみられるが、開眼しない。
- 4. 痛み刺激に反応しない。
答えは
↓
↓
↓
↓
↓
3 JCSを確実に暗記しましょう。
問題2/3入院後、意識状態は改善し、車椅子でトイレでの排泄が可能になったころから、左肩関節の熱感と痛みとを訴えはじめた。対応で適切なのはどれか。
- 1. 関節可動域訓練を積極的に行う。
- 2. 三角巾で固定する。
- 3. 温罨法を行う。
- 4. ベッド上安静にする。
答えは
↓
↓
↓
↓
↓
2 です。
右中大脳動脈領域の脳梗塞と診断
とあります。このため左の麻痺や、もしかすると半側空間無視も出ているのかもしれません。左側の身体が動きにくい、そのうえ左側を認識できていない。これらが組み合わさって、いつのまにか身体の左側を痛めてしまったのかな、と想像されます。
そうならないように保護していくという点で、2が正解です。
問題3/31か月後歩行可能になったが、身体の片側を壁や扉にぶつけるようになった。廊下で看護師とすれ違っても気付かないことがある。どのような異常が生じていると考えられるか。
- 1. 半側空間無視
- 2. 失行
- 3. 見当識障害
- 4. 記憶障害
答えは
↓
↓
↓
↓
1です。多くの場合は左側で半側空間無視がおこります。
コメント